リストカット(リスカ)について カウンセリングの中で考えてみたこと
相談に来た学生で、リストカット(リスカ)をしていた・現在している、という人は少なくない。
カウンセリングに来ていなくても、リスカ経験者は意外とたくさんいる。
リスカする理由
・死にたいから
・辛い感情から逃れるために
・自分の存在を確かめるために
上のようなことが昔から言われている。
加えて、リスカしている人と関わる側の中には、アピール(かまってほしい等)のためにやっているのでは、と考える人もいる。
総じて、辛い感情や死にたいほどの苦しみを抱えているということは言えそうである。
かまってほしいというアピールという考えも、その背景を想像すれば、なんらかの辛さや寂しさがあるからこその行動であると言える。
しかし実際のところはどうなのだろうか。
カウンセリングの場面で、リスカの背景や理由、感情を聞いていて、分からないことが多い。
上のような理由を当てはめれば、まぁそれなりに説明はできそうだが、どうも腑に落ちないところが多々ある。
というのも、リスカをする動機や感情に(もちろんケースによるのだが)生き死にに関わる切迫さが伝ってこなかったり、いかにも普通で困っていることは特に思いつかないという子がいたりする。
困っている感じと、行動(リスカ)のギャップがあり、リスカの捉え方を見直さないといけないのではないかなぁと感じたのだ。
もちろん人によっては、辛い感情を受け止められないから行動化するのであって、感情を解離(切り離して)させて話しているから切迫さを感じられないだけ。
本当は深いところに苦しみがあるという可能性もあるので、見逃すことはできない。
しかし、リスカは苦しさや死にたい気持ちがあるからだという決めつけも良くない。
なので、自分なりに少し考えてみる。
リスカのきっかけ
・友人に勧められた
これは結構多い。
もともとリスカをしている友人がいて、それを止めるのではなく、勧められてやってみたという。
友人グループでやるという人もいて、その場の雰囲気でやってみるという。
・ネットで興味を持った
SNSでリスカについて調べてもらえばわかるが、傷跡の写真をアップしたり、リスカに関するつぶやきはすぐに出てくる。
・なんとなく始めた
特にこれといった理由はないが、衝動的にやったのがきっかけという人もいる。
リスカの認知度が上がり、友人やSNSを通して、違和感なく情報が入ってくるようになっているように思われる。
リスカしたいと思う時
・嫌なことがあった時、イライラ、気分の落ち込み、不安、孤独
実際に嫌なことがあった時、リスカしたくなる
リスカのことだけに集中できるのでそれ以外のことは忘れられる。
・なんとなくする
常習的にやってしまう。
リスカした後
・気持ちがスッキリする
嫌なことが忘れられる。
楽しい。
・罪悪感
やってはいけないと思っていたり、止められなかった自分への罪悪感
多くはリスカしたくなるのは、嫌な体験に伴う辛い感情や、関係なく漠然と不安感や孤独感があるという。
そしてリスカすると、そういった気持ちが一時的にしても忘れられ、スッキリする。
その体験が楽しいという人もいた。
死にたいくらい辛い、とまでは言わないにしてもなんらかのネガティブな感情は体験している。
(当然、人によっては本当に死んでしまいたいくらい辛い気持ちの人もいる)
僕が疑問に思ったのは、
辛い、苦しい、孤独などの感情があったとして、そこからリスカに至るまでのプロセスだ。
上に挙げた例では、その感情があり、すぐにリスカによってスッキリしようとしている。
この間に「悩む」という過程が抜け落ちている。
嫌なことがあった時、
気持ちが落ち込む→悩む→解決策を見出す、又は悩み続ける→気持ちが正常に戻る。
ざっくり言えばこれを繰り返すと思う。
しかし、リスカを当てはめると、
気持ちが落ち込む→リスカする→気持ちが戻る。
ということになる。(ごく簡単に書いたので、もちろんそうでない人もいる。何度も言うがケースによって違う)
つまり、「悩めない」ことにより、感情をうまく処理できず、一時しのぎとしてリスカをしてしまう場合があるのではないかと思えるのだ。
「悩む」と言うのは時間がかかるしエネルギーもいる。
さらに悩んだ末、具体的な解決策が出ないことも多い。
「悩むだけ無駄」と言われるように、とても非効率な作業のように思える。
しかし、悩むことをやめ、効率的、合理的な生活ばかりに行き過ぎると、どこかで歪みが出るのではないだろうか。
今回は最近のリストカットについて、少し従来と違う角度で見てみた。
一つの説に過ぎないし、繰り返し書いているが、リスカの考え方はそれぞれ違う。
最後に、
もし身近にリスカをしている人がいるのなら、「この人は病んでいるんだな」「辛いことがあるんだな」と決めつけず、聞いてみるといい。
実際にリスカをしている人で、もしやめたいのであれば、それをする理由を一緒に考えてくれそうな人に話してみてもいいと思
う。
以下、参考までに、悩むことの重要性について考えた記事を貼っておく。